「兼業・副業・複業」のいま:人材確保の鍵として注目される多様な働き方と経産省の支援策

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「兼業・副業・複業」のいま:人材確保の鍵として注目される多様な働き方と経産省の支援策

近年、日本の労働市場では「兼業・副業・複業」という言葉が飛び交うようになった。少子高齢化が進み、企業の人材確保が困難さを増す中、多様で柔軟な働き方の推進は喫緊の課題だ。なかでも注目されているのが、経済産業省が主導する“越境人材”の活用や、副業・兼業を通じた地方企業の成長支援策である。

本稿では、「兼業・副業・複業」が広がる背景、経済産業省の支援策、そして企業・個人がこの流れをどう活かすべきかを考察する。

“働き方の三兄弟”―兼業・副業・複業のちがいと可能性

まず、「兼業」「副業」「複業」という言葉は似て非なるものだ。

  • 兼業は、たとえば農業と会社員、あるいは教員と執筆業など、本業と別の職業を並行するケースで、一定の責任を伴う「もう一つの仕事」があるイメージだ。
  • 副業は、収入補完を主目的とし、本業の空き時間を使って取り組む働き方。ウーバーイーツやECサイト運営など、比較的柔軟な活動を指すことが多い。
  • 複業は、明確に複数の仕事を本業として位置づけ、自らのスキルや価値観に応じて複数の収入源を持つ働き方。キャリアの多軸化・多面化とも言える。

コロナ禍を機に、リモートワークや時間の自由度が高まったことで、このような多様な働き方を模索する人が急増した。特に都市部の高度人材による“複業”ニーズは強く、企業側も従来の「就業規則で副業禁止」というルールから、個別判断・条件付き解禁へとシフトしつつある。

経産省が描く人材流動化と地域活性の戦略

こうした変化に対応するため、経済産業省は近年、複業・副業を通じた「人材の地域間移動」「都市部のスキルの地域還流」に注力している。

特に代表的な取り組みが「越境的副業・兼業」の推進だ。これは、都市部に住むスキル人材が、地方企業の経営課題やプロジェクトに対して週1〜2回程度リモートで関与し、ノウハウ提供や新規事業開発を支援するモデルである。実際、経産省の支援事業「越境人材マッチング事業」では、すでに100社以上の中小企業が都市部人材とのマッチングを実現している。

また、2023年からは「複業人材活用推進事業」において、地方の中堅・中小企業が複業人材を受け入れる際の制度設計支援や、受け入れ研修・オンボーディングの支援など、実務面に踏み込んだ施策も展開。人材獲得が困難な地域企業にとって、外部知見を取り入れつつ自社の課題解決に取り組めるというメリットが生まれている。

人材確保の新常態:「雇う」から「巻き込む」へ

これまでの日本企業は、正社員という形で「囲い込む」人材戦略が一般的だった。しかし、労働人口の減少や価値観の多様化により、終身雇用を前提とした人材確保は現実的ではなくなっている。

そこで浮上するのが「巻き込む」人材活用モデル。副業・兼業・複業人材を社外から迎え入れ、短期的・プロジェクト的に関わってもらうことで、即戦力としての知見やスキルを取り込み、社内人材の成長にもつなげる。このモデルは、特に経営資源の限られる中小企業において有効だ。

例えば、マーケティングやブランディング、DX(デジタルトランスフォーメーション)など、専門性の高い業務では、社内にそのスキルをフルタイムで持つ人材を雇用するのは非現実的である。しかし、副業・複業人材を週1回のリモートミーティングで巻き込めば、戦略レベルの支援を受けながら、社内スタッフの育成も図れる。

個人にとっての副業・複業の意義

一方、個人にとっても、副業や複業は「第2の収入源」という以上に、キャリア形成の場として重要な意味を持つ。

  • 自分のスキルを試す
  • 社外の人脈を広げる
  • 本業とは異なる分野で経験を積む
  • 将来の独立や起業に備える

こうした活動を通じて、自律的なキャリアを構築する動きが加速している。とりわけ20〜40代の間では、「1社に依存しない働き方」こそが安定という意識すら芽生えてきた。

また、経産省の支援施策の一部は個人向けの情報提供にも注力しており、実際に「副業で地域企業に貢献したい」という都市部のビジネスパーソンと、「人材がいない」と悩む地方企業を結びつけるマッチングプラットフォームも整備が進んでいる。

まとめ:副業・複業は人材確保の“攻めの一手”になるか

「兼業・副業・複業」は、もはや個人の自由や企業の好意による一時的な制度ではなく、人口減少時代における戦略的な人材活用手段へと進化しつつある。経済産業省を中心に、制度整備・マッチング支援・モデル事例の発信などが強化され、国としても「人材のシェアリングエコノミー化」を見据えているといっても過言ではない。

今後の企業経営においては、「どのように人を採用するか」だけでなく、「どのように人を巻き込み、価値を引き出すか」が問われる。副業・複業はその問いへの一つの答えであり、人材確保に悩む企業にとっての“攻めの一手”となる可能性を秘めている。

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[取材・編集 KROW編集部]

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