企業ができる防災対策とは ― BCPと日常の備えで守る人と事業

役立つ知識

企業ができる防災対策とは ― BCPと日常の備えで守る人と事業

日本は地震、台風、豪雨など自然災害のリスクが高い国です。被害が発生した際には、従業員の生命を守ることが最優先となりますが、同時に企業には「事業を止めない」「取引先や顧客に影響を最小限にする」という社会的責任も求められます。ここでは、企業が実践できる防災対策を、平時からの準備・災害発生時の対応・事業継続の観点から整理します。

平時からの備え ― 「命を守る」仕組みづくり

避難体制と訓練

企業の第一の責務は従業員の安全確保です。建物の避難経路を明確にし、非常口・消火器・AEDの位置を周知徹底しておくことが重要です。年に1〜2回の避難訓練を行い、実際に「どの経路で避難するか」「誰が安否確認を担うか」を体験させることで、いざというときの混乱を防げます。特にオフィスビルの高層階では、地震や火災の際にエレベーターが使えないことを想定し、階段での誘導方法を確認しておく必要があります。

備蓄品の確保

最低3日分、可能なら1週間分の水・食料を備蓄することが推奨されています。加えて、簡易トイレ、毛布、携帯充電器、衛生用品も不可欠です。企業が備蓄を行うことは、従業員だけでなく、出張中や来社中の顧客を守ることにもつながります。また、備蓄は定期的に入れ替える「ローリングストック方式」を取り入れると効率的です。

情報伝達の仕組み

災害発生直後は通信手段が制限される可能性が高いため、緊急連絡網や安否確認システムを導入しておくことが望ましいです。大手企業では専用アプリを活用するケースも増えていますが、中小企業でもクラウド型の安否確認サービスを比較的低コストで導入できます。

災害発生時の対応 ― 初動の速さが被害を分ける

安否確認と人命救助

発災直後は、まず従業員と顧客の安否確認を行います。安否確認を短時間で終えるために、普段から「誰が誰を確認するか」という役割分担を決めておくことが肝心です。

また、従業員の中で応急手当やAED使用に習熟した人を増やしておくと、初期対応の幅が広がります。防災教育を研修制度の一部に組み込むことも有効です。

取引先・顧客への対応

災害はサプライチェーン全体に影響を及ぼします。自社が被災した場合でも、取引先への連絡を迅速に行い、状況を共有することが信頼維持につながります。逆に取引先が被災した場合には、代替調達の準備や柔軟な納期調整を行える体制が求められます。

事業継続計画(BCP)の策定と実行

BCPの重要性

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)は、災害や感染症、システム障害などで事業が中断した場合でも、優先度の高い業務を早期に復旧させるための計画です。特に製造業や物流業、小売業などでは、BCPの有無が事業存続に直結します。

優先業務の特定と代替策

全業務を同時に復旧することは難しいため、まずは「顧客への納品」「基幹システムの維持」など、最も重要な業務を特定します。そのうえで、代替拠点の確保、テレワーク体制の整備、在庫や資材の分散保管といった施策を検討します。

ITシステムとデータ保護

デジタル化が進む現代では、ITシステムの停止が直接的な損失を招きます。クラウド活用やバックアップ体制を強化し、データを複数拠点に保管することが必須です。サイバー攻撃や停電も想定し、セキュリティと冗長性を両立させる必要があります。

防災を企業文化に根付かせる

防災対策は一度マニュアルを作れば終わりではなく、継続的に改善していくものです。新入社員研修に防災教育を組み込み、定期的に訓練や見直しを行うことで、組織の記憶として蓄積されていきます。また、CSR(企業の社会的責任)やサステナビリティの一環として防災を位置付けることで、取引先や地域社会からの評価も高まります。

さらに、企業単体では限界があるため、自治体や地域の防災組織、業界団体と連携することも重要です。地域全体での協力体制を構築することで、被災時の助け合いが実効性を持ちます。

まとめ

企業ができる防災対策は、大きく「従業員の安全確保」「取引先・顧客への責任」「事業継続の確保」に整理できます。

  • 平時には避難訓練、備蓄、安否確認体制の整備
  • 発災時には人命救助と関係先への迅速な情報共有
  • 復旧段階ではBCPをもとに優先業務を再開し、社会的責任を果たす

こうした取り組みは、単なるリスク対策にとどまらず、企業の信頼性を高め、長期的な競争力を支える基盤となります。災害大国・日本で事業を営む以上、防災は「コスト」ではなく「投資」として捉えることが不可欠です。

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