準委任契約で受注者に発生する善管注意義務とは?仕事に責任を持ってトラブルを未然に防ごう!
複業者として活動していくと、準委任契約をはじめとする業務委託契約を締結する場合があるでしょう。本記事では、準委任契約を締結した際に受注者に課せられる善管注意義務について解説します。
複業者の皆さんのトラブルを未然に防ぐ一助となれば幸いです。
準委任契約とは?
最初に、準委任契約の概要について、他の契約形態と比較しながらおさらいします。
準委任契約は業務委託で用いられる契約形態の一種である
準委任契約は発注者が仕事を自社内で行わず、外部に依頼する際、つまり業務委託で用いられる契約です。たとえ業務を完了させなくとも、業務を遂行するだけで報酬が発生する点が特徴です。
報酬は作業時間や工数、あるいは業務によって得た結果などを基準に決まります。また、対象の業務範囲は法律行為を除く多種多様の分野に渡ります。
準委任契約の特徴 他の契約形態と比較すると?
業務委託では、準委任契約の他、請負契約や委任契約などの多様な契約形態があります。
参考までに、請負契約では準委任契約と異なり、業務の完了や成果物の提出を以て契約完了とします。原則、業務の遂行だけでは報酬が発生しません。
委任契約は法律行為のみが業務の対象となります。例えば弁護士に裁判の代理人をお願いする場合などです。
業務委託で求められる責任
業務委託で用いられる契約形態によって、受注者に求められる責任も変わってきます。
準委任契約では善管注意義務が求められる
準委任契約および委任契約では、受注者の責任として、善管注意義務が求められます。
(受任者の注意義務)
引用:民法
第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
上記の「善良な管理の注意」を善管注意義務と呼びます。
準委任契約の受注者は、善管注意義務、すなわち通常要求される程度の注意義務を果たす義務があります。この内容については後段で詳しく解説します。
請負契約では契約不適合責任が問われる場合もある
請負契約の場合は、受注者に対して契約不適合責任が問われる場合があります。
契約不適合責任とは、請負契約において完了した業務に不備不足などが認められ、契約内容を満たしていないと判断された場合、受注者がこれに対処しなければならない、という責任です。
(買主の追完請求権)
第五百六十二条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
(買主の代金減額請求権)
第五百六十三条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
引用:民法
上記は売買契約についての定めですが、これを準用する形式で、請負契約にも当てはめられています。
(有償契約への準用)
引用:民法
第五百五十九条 この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
不適合とされた内容によっては、発注者から修理対応や修正対応、契約金額の減額を求められたり、契約を破棄されたりする可能性もあります。
準委任契約での善管注意義務と比較して、請負契約の契約不適合責任では、受注者に対して厳しい責務があるといえるでしょう。
善管注意義務について詳細を解説 トラブルを防ぐには?
それでは、準委任契約における善管注意義務について更に細かく解説していきます。
善管注意義務の定義は具体的に決められていない
善管注意義務に違反した、とされるような状況にはどのような場合があるでしょうか?実は、法令上全ての準委任契約に共通する具体的な善管注意義務の内容は、定められていません。
受注者はその立場、社会通念上、求められる注意義務を果たさなければなりませんが、何を以て善管注意義務違反とされるかは、最終的には司法の判断にまかせることになります。
この通り明確な定めはありませんが、仕事を請ける以上は細心の注意を払い、その業務に臨むべきでしょう。
善管注意義務に違反した場合はどうなる?
もしも善管注意義務違反であるとされた場合、どのような事態になるのでしょうか。上述の通り、善管注意義務の定義はあいまいです。基本的には締結した契約ごとに判断が下されます。
社会的な常識に従って行動していれば、善管注意義務に問われる可能性は低いでしょう。
しかし、契約内容や状況によっては、受注者が善管注意義務に違反しているとみなされ、損害賠償などの民事上の責任を問われる可能性もあります。
トラブルを未然に防ぐには?契約内容をよく確認しよう
善管注意義務違反などの準委任契約でのトラブルを防ぐにはどうすればよいでしょうか。
まずは契約内容をよく確認することです。事前に発注者と受注者でそれぞれ契約内容を精査し、トラブルに発展しそうな事項については、あらかじめ双方のコンセンサスを取るようにしましょう。
また、可能ならば契約書や仕様書に、善管注意義務の争点となりそうな事項について、個別に明記しておくのも良いでしょう。
たとえ善管注意義務に問われなくとも、仕事には責任を持つべき
上述の通り、一般的な社会常識、通念、その他業界知識に従って仕事をすれば、善管注意義務違反に問われる可能性は低いです。
しかし、たとえ法令上で善管注意義務違反とみなされなくとも、受注者には仕事を受けた以上、業務と発注者に対する責任があります。
仕事に対して、客観的に許容できない怠慢な態度や、不注意があった場合、受注者に対する信用は失われていくでしょう。場合によっては、発注者からだけではなく、その他のビジネスパートナーや、一般社会からも信用を失う可能性があります。
もしも受注者が案件の維持や、更なる案件の獲得、事業規模の拡大を狙うのならば、受注した業務に対して細心の注意を払い、最善の方法で取り組むことをおすすめします。
まとめ
以上、準委任契約における善管注意義務について解説しました。
皆さんが契約上のトラブルを未然に防ぎ、複業者としてさらなる飛躍を遂げることを願っています。
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[取材・編集 KROW編集部]
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