【個人事業主】益税解消になるのか|インボイス制度

制度

【個人事業主】益税解消になるのか|インボイス制度

消費税が導入されて30年以上経過している今、2023年10月1日から新たに始まった消費税のインボイス制度。導入の目的は、益税の解消です。従来の消費税の計算から益税がなぜ発生するのか。インボイス制度はどのような制度で、導入するとどのように益税が解消されるのか。そして課税事業者、免税事業者に与えるインボイス制度の影響について見ていきます。新たにシニアで独立して開業した個人事業主の課税事業者登録についても紹介します。

益税と発生理由

消費税は、消費者に対して公平に課税される間接税です。消費者が直接国や地方公共団体に納税することはありません。事業者の提供する商品やサービスに添加され、集められた消費税を最終的に事業者がまとめて納税します。

消費税の納税義務のない免税事業者は、取引相手から預かった消費税の納税が免除されています。発行する請求書に消費税をのせて請求することが可能です。免税事業者が預かった消費税は納税されることなく利益に計上されることから、益税と呼ばれています。

益税は、消費者が商品やサービスの対価として支払った消費税の一部が、納税されずに受け取った業者の利益になることです。

もう少し噛み砕いて説明すると、インボイス制度導入前は、その取引の内容が消費税の課税取引かどうかに基づいて行われました。取引の相手が消費税を納税している事業者か、それとも免税事業者かは消費税の計算には関係ありませんでした。

そのため、免税事業者に対しても消費税を含めた金額を支払っていたことになります。この時、代金を受け取った免税事業者は、消費税額を含めた金額が売上高になります。

一方、免税事業者は消費税の納税義務がないため、受け取った消費税額を消費税として納税することはありません。結果、10%あるいは8%上乗せされた売上高が計上され、その差分が利益になり、これが益税と呼ばれています。

益税の発生原因のもう一つは、簡易課税方式によるものです。予定された「みなし仕入率」に基づく算出と、実際の仕入額の金額が、みなし仕入率の金額が大きい場合、還付される金の金額が多くなります。この、みなし仕入額ー実際の仕入率=益税  となります。

このような免税事業者や簡易課税方式が採用されたのは、個人事業主や事業者が納税する消費税などの労力を軽減するためでした。

インボイス制度の影響

インボイス制度とは、2023年10月以降に導入された制度です。

請求書に 

  • 登録番号
  • 適用税率
  • 消費税額率

この項目を追加記載した適格請求書(インボイス)でなければ仕入額控除が受けられなくなります。適格請求書を発行できるのは、税務署に登録した「適格請求書発行事業者」です。「適格請求書発行事業者」は課税事業者であり、免税事業者は適格請求書を発行できません。

インボイス制度では、免税事業者との取引において、消費税を支払わないようなルールが設けられています。それは、適格請求書がなければ消費税を仕入額控除できなくなるというものです。適格請求書を発行しなければ消費税を受け取ることができなくなるということです。

免税事業者どうする?

では免税事業者はどうしたらよいのか、2つの選択肢があります。

1.そのまま免税事業者でいく

この場合は、売上金額が消費税を含まないため、これまでより手取り額が減ることになります。課税事業者となって売上高が増加したとしても、消費税を納税すれば手元には残りません。それなら手間の掛からない免税事業者のままという選択もあります。取引相手が一般消費者のみである場合、例えば学習塾やサロン、小売り店舗などは、適格請求書を発行する必要がないのでそのままでも影響は少ないでしょう。

2.課税事業者になる

2つめは、課税事業者となり、同時に適格請求書発行事業者になる。適格請求書を発行して、消費税を含めた金額を請求し、売上高に計上することができます。取引先は消費税を払っているため、支払額から仕入税控除をすることもできます。取引先の希望で課税事業者にならざるを得なくなる場合もあることでしょう。

新たに開業した個人事業主の登録時期の特例

インボイス開始後、新たに開業した個人事業主が事業開始と同時に適格請求書発行事業者の登録を受けることができるかという問いに税理士が答えています。

「新たに開業した個人事業主が免税事業者の場合、事業を開始した日の属する課税期間の末日までに、課税選択届を提出すれば、その事業を開始した日の属する課税期間の初日から課税事業者となることができます。また、新たに開業した個人事業者が、事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した申請書を、事業を開始した日の属する課税期間の末日までに提出した場合において、税務署長により適格請求書発行事業者登録簿への登録が行われたときは、その課税期間の初日に登録を受けたものとみなされます。したがって、新たに開業した個人事業主が免税事業者である場合、事業開始から、適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、開業後、その課税期間の末日までに、課税選択届出書登録申請書を伴せて提出することが必要です。」 

新しく始まった制度ですが、実績のある個人事業主でも、シニアで独立して開業したばかりの個人事業主であれば特に、免税事業者になるのが良いのか 、課税事業者になるのか良いのか、判断しにくいでしょう。このような方たちのためにインボイス制度の経過措置があります。令和5年10月1日のインボイス制度開始から6年間は、仕入税額控除の一定割合が控除可能となります。この間、値下げ交渉や取引停止など色々なことが起こるだろうと予測されます。この間にインボイス制度発行業者になったほうがよいのか、免税事業者のままでいた方が良いのかを判断ができるようになるでしょう。

まとめ

インボイス制度の導入で、課税事業者だけでなく免税事業者にも多大な影響があります。適格求書発行の対応で益税の多くは解消されるでしょう。

2023年10月から新たに始まった消費税のインボイス制度。導入した目的は、益税の解消でした。従来の消費税の計算から益税が発生していたことがわかりました。インボイス制度について、導入するとどのように益税が解消されるのか。そして課税事業者、免税事業者に与えるインボイス制度の影響について解説してきました。シニアで独立して個人事業主となる方は焦ることはありません。インボイス制度開始からの6年間を「猶予期間」と考えてじっくり考えてみてください。

引用文献

中島祥貴著、「インボイス経理」2023年.p163〜164.

「複業」をはじめよう!

KROWはこのようなご自身の持てる能力を広く社会に還元する(複業=Multiple job)意欲のある方をサポートしおつなぎしております。

現在会社員の方はもちろん、フリーランスの方、資格をお持ちの方、起業家の方など「真の意味の複業」を目指す人を募集しています!

[取材・編集 KROW編集部]

コメント

タイトルとURLをコピーしました