企業の就業規則と「副業解禁」──最新のモデル就業規則と実務ポイント

企業向け

企業の就業規則と「副業解禁」──最新のモデル就業規則と実務ポイント

昭和・平成を経て令和に入り、雇用・労働を取り巻く環境は大きく変化しました。人生100年時代やデジタル化、流動化するキャリア観により、社員が複数の働き方を選べる環境づくりは経営課題になっています。その一環として、副業・兼業(以下「副業等」)を企業がどのように受け止め、就業規則に反映させるかが注目されています。ここでは、最新の厚生労働省ガイドライン改定(2024–2025年の更新を含む)やモデル規定を踏まえ、企業が押さえるべきポイントを整理します。

副業・兼業とは何か

副業・兼業とは、本業(主たる雇用)とは別に、報酬を得る業務に従事することを指します。最近は「複業」「パラレルワーク」などの呼称も浸透し、単に収入補填だけでなく、スキル習得や起業準備、地域貢献など多様な目的で行われています。厚生労働省は副業等の促進を後押しする一方で、長時間労働につながらないように注意喚起しています。

モデル就業規則の変遷と現行の考え方

厚生労働省のモデル就業規則は、2018年以降に「許可なく他社で働かない」といった一律禁止規定を削除し、副業等に関する規定の新設・改訂を進めています。2024–2025年のガイドライン改定では、企業が副業等を促進する際に配慮すべきポイント(労働時間管理、健康確保、利益相反、機密保持等)が改めて整理されています。就業規則には「禁止」か「届け出制」か「原則自由だが例外あり」か、といった方針を明確に示すことが求められます。

企業が就業規則で定めるべき主要項目

実務上、就業規則や運用ルールで明記しておくべき項目は次の通りです。

副業等の扱い方(許容範囲)
どの業務は許容し、どの業務は不可とするか(例:競合業務、社内資産の私的利用、勤務時間中の兼務など)。方針は具体的に示すほどトラブルが少なくなります。

事前届出・報告義務
副業開始前・変更時の届出義務、許可基準(審査フロー)を定めます。実務では簡易な申請フォームとレビュー手順を用意すると運用が楽になります。

労働時間管理(通算の原則)
労働時間は「事業場を異にする場合でも通算する」ため、本業と副業を合算して法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた場合は時間外労働の割増賃金や健康管理の観点で対応が必要です。就業規則では社員に自主管理を求めるだけでなく、必要に応じて企業側が労働時間の把握方法(自己申告、勤怠システム連携など)を整備する旨を明記してください。

安全配慮義務と健康管理
使用者は安全配慮義務を負い、長時間労働や過重労働を避けるための措置(面談、産業医連携、健康診断フォロー等)を規定します。また、社員側にも健康管理の自己責任を促す文言が必要です。

機密情報・兼業による利益相反の制限
顧客情報や技術情報の流用防止、兼業先が競合となる場合の禁止・制限、企業の資産や営業機会の私的利用禁止を明確化します。違反時の懲戒規定も併せて整備してください。

通勤手当・労災・社会保険の取り扱い
通勤手当は会社の就業規則で定める任意給付であり、副業分の通勤費精算ルールを明記します。副業中の通勤災害や業務災害発生時の対応フロー(どの事業主が労災手続きを行うか、報告義務)を整理しておくことも重要です。社会保険については、複数勤務先で加入要件を満たす場合の「二以上勤務被保険者」手続き等、必要な届出を案内する規定を入れてください。

就業規則運用のワンポイント

  • リスクベースで「段階的解禁」を検討する
    まずは管理職以外や職種限定で試行し、運用ルールをブラッシュアップする方法が現実的です。
  • 届出→審査→記録のワークフローをITで簡素化する
    勤怠と連動させると労働時間通算の把握がしやすくなります。
  • 周知と教育
    企業側の意図(イノベーション促進、スキル獲得支援など)を示しつつ、社員向けFAQやハンドブックを整備します。誤解で「無断兼業禁止」の旧ルールが残っていることが多いので、就業規則改定時は社内説明会を行ってください。

就業規則改定や運用開始時に確認すべき項目

副業の許容範囲を明確にしたか。

届出・許可・審査のルールを明文化したか。

労働時間の通算ルールと把握方法を整備したか。

健康管理・産業医連携の体制を用意したか。

機密・競合禁止の規定と違反時の処分を明記したか。

通勤手当・労災・社会保険の実務フローを整理したか。

まとめ

いかがでしたか?副業・兼業の制度化は企業にとって人材活用の幅を広げるチャンスである一方、労務リスクを見落とすと重大なトラブルに繋がります。就業規則の改定は法令(厚労省ガイドライン、労働基準法等)の最新動向を踏まえ、労務・法務・経営の関係者で整合を取りながら進めることをおすすめします。

「複業」をはじめよう!

KROWはこのようなご自身の持てる能力を広く社会に還元する(複業=Multiple job)意欲のある方をサポートしおつなぎしております。

現在会社員の方はもちろん、フリーランスの方、資格をお持ちの方、起業家の方など「真の意味の複業」を目指す人を募集しています!

[取材・編集 KROW編集部]

参考
・厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(改定版・パンフレット 令和7年/2025年3月)
・厚生労働省「モデル就業規則(副業・兼業に関する改定例)」
・労働基準法第38条関連資料(労働時間の通算に関する解釈・通達)
・社会保険(健康保険・厚生年金)の「二以上勤務被保険者」に関する手続き・解説

コメント

タイトルとURLをコピーしました