副業の実態・意識ってどうなの?調査レポートまとめ【その5】~副業に関するリスクについて~
働き方改革の一環として2018年に厚生労働省がガイドラインを出して以来、副業(複業)は一般的に定着してきたイメージがありますが、その実態はどうなっているのでしょうか?
実はパーソル総合研究所で企業側・従業員側の両方の視点から調査を実施(2021.8)した結果が公開されています。
全87ページに渡る詳細な調査結果について、ポイントをまとめました。
■第二回 副業の実態・意識に関する定量調査(パーソル研究所・2021.8)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/sidejob02.pdf
■(参考)第一回の同調査(2019.5)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/sidejob.pdf
調査概要
調査手法:調査モニターを用いたインターネット定量調査
調査時期:2021年3月4日-8日
調査対象者:
【企業調査】
経営層・人事(主任・リーダー以上)で人事管理(制度設計・運用等)について把握している者 n=1,500
<企業の条件>従業員人数10人以上
【個人調査】
(1)正社員20-59歳 男女 n=34,824<企業の条件>従業員人数10人以上
のうち
(2)副業(現金収入を伴う仕事)を現在行っている者 n=1,703
実態調査の目的は?
このレポートの目的は以下の通りです。
■副業に関する企業、個人の実態や意識を明らかにする。
■副業による本業へのプラスの還元を高める要因、過重労働リスクを高める要因などを明らかにする。
■企業の副業者(他社で雇用されている人材)の受け入れの実態、受入れ意向を明らかにする。
徹底的な実態調査・意識調査を企業側からも個人側からも行い、その要因についても詳しい考察が加えられています。
レポートの構成
全87ページに及ぶレポートは以下の構成でまとめられています。
1. 企業における副業容認の実態
2. 企業における副業容認に関する運用実態
3. 正社員の副業に関する実態・意識
4. 正社員の副業の実態 [詳細]
5. コロナ禍の影響で行われている副業の実態
6. 副業における本業への還元/過重労働リスク/人材流出リスクの要因
7. 企業の副業者(他社で雇用されている人材)の受け入れの状況
このうち1と2および7では企業側の実態・意識について、3~6では従業員側の実態・意識について調査が行われています。
KROWではこのレポートを6回に分けて要点をまとめてご紹介します!
その1 レポート概要
その2 企業での実態と運用
その3 正社員の実態と意識
その4 コロナ禍の影響について
その5 副業に関するリスクについて(本記事)
その6 企業での受け入れの状況
レポートまとめ(その5・副業に関するリスクについて)
6.副業による本業への還元/過重労働リスク/人材流出リスクの要因[従業員側調査]
まず初めに、副業による本業への還元に関する調査結果を見ていきたいと思います。副業を実施したことによる本業への還元(プラスの変化)は、スキル・知識面で3割前後の副業者が実感しているとの調査結果が出ています。
また、マインドセット面では3~4割の副業者が変化を実感しているようです。
副業を始める要因は様々なものがあると思いますが、大半の動機は収入の増加やスキルの向上が主な要因でしょう。にもかかわらず、意外な点としてこの調査ではスキル・知識の変化よりもマインドセット面の方が副業者が変化を実感している割合が多いということになります。
マインドセットの変化に関して一部抜粋すると、「視野が拡大した」「新しいことを取り入れることに抵抗がなくなった」などがあります。上記であげたマインドセットの変化は、これら変化が副業を始める目的になっていたというより、副業をしていく過程で自然と変化を実感できたのでしょう。
実際にマインドセットの変化は本業にも良い影響を与えることでしょう。
スキルや知識の変化は、ある特定の専門分野でしか活かせないかもしれません。しかし、マインドセットに関しては、どの場面でも良い効果を発揮する汎用的な要素です。元々それらマインドセットの獲得を目的していなかったにせよ、副業を始めることで本業に良い変化をもたらし、副業→本業へと良いサイクルをもたらすことが期待できるでしょう。
では、逆に副業によって本業に発生した問題・課題はどのようなものがあるのでしょうか。
調査結果によると、副業によって本業に発生した問題・課題は、「過重労働となり、体調を崩した」が最も多く16.1%。 次いで「本業をおろそかにするようになった」15.0%、「過重労働となり、本業に支障をきたした」14.1%が続くという調査結果になりました。
「本業の企業のイメージダウンになるような問題を起こしてしまった」「本業の情報を 持ち出してしまった」のように直接的に本業に悪影響を与えた要素もあります。
しかし、どちらかというと、「過重労働となり、体調を崩した」という副業を行っていることで間接的に本業にも悪影響をもたらしている事柄の方が多くを占めていることがわかります。本業をしながら副業を行っている人々には、様々な大変な点があります。その中でも大きな要素が自己管理が挙げられるでしょう。
遅くまで勤務した後に副業をしたり、さらには土日も休まず副業活動をしている人も多いと思います。そうなってくると、睡眠時間が十分に確保できなかったり、疲れを癒すことができない、さらには心のケアまで手が回らないといったことが起こるでしょう。
副業はさらなる収入源獲得の上で、さらにはさらなる自己成長に向けてとても効果的な活動です。しかし、副業が原因で本業に悪影響を与えてしまったら本末転倒のため、自己管理には注意しなければいけません。
では逆に副業を通して本業に還元する要因はどのようなものなのでしょうか。副業による本業への還元の要因分析をしてみると、以下のような調査結果がわかりました。
本業への還元を促す副業動機は「スキルアップ・活躍の場の拡大」「自己実現」「なりゆき・頼まれ副業」。 一方で「本業への不満」からくる副業は、本業への還元にはつながらないことが確認されました。
本業への還元を促す副業の特性は「本業のスキルを活かせる仕事」「仕事の成果について、他者からフィードバックを受けている」 「多くの人と関わり合って進めることが多い仕事」などが挙がりました。また、副業で成長実感や社会貢献実感があることも本業への還元を高めていたこともわかりました。
この調査結果からわかることとして、副業自体の業務内容だけでなく、副業者が副業に対してどのような意識をもって取り組んでいるのか、という点も本業への還元の要因に結びついていることがわかります。中でも、副業に対しての「自己成長の実感」や「社会貢献の実感」が本業への還元と一見結びつきがなさそうであるにもかかわらず還元要因となっている点は意外性がありますよね。
また、「副業の労働時間の把握」「副業のやり方についてのアドバイス」などの職場の支援が副業による本業への還元を促しており、上司のマネジメント行動は「副業についてアドバイスしてくれる」「副業も含めて評価してくれる」など、副業に対する肯定的な態度 が本業への還元を高めていました。
このように、副業によって本業へ還元してくれる場合もありますが、やはり依然として副業による過重労働リスクは会社からすると不安な要素となるのでしょう。
では、どのような条件や状況下にある時、過重労働リスクが高まるのでしょうか。
本業の働き方別に過重労働リスクを見ると、フレックス制度、勤務日数選択制が適用されているほど過重労働リスクが高まっていることがわかります。また、本業の残業時間が長くなるほど過重労働リスクが増加する傾向が見られました。
働き方の自由度が高まるほど、精神的な安定は生まれるが身体的な過重労働リスクは高まる傾向にあるのだとわかります。
一方で副業の働き方別に過重労働リスクをみると、成果報酬型の副業のほうが労働時間報酬型の副業よりも高くなっています。また、平日(本業の勤務日)の労働時間が長いほどリスクが高まる傾向。在宅勤務の割合が高いほどリスクが低下していることがわかります。
これら調査から、本業・副業共に過重労働リスクを下げてしまうことが読み取れました。そのため、頑張りすぎてしまうあまり過重労働になってしまうことに注意し、バランスを保った生活を意識するのが大切なのかもしれません。
いかがでしたでしょうか?
今回は「副業に関するリスクについて」を読み解いていきました。全体の傾向やその他の事業についてのまとめは、その他のレポートとしてまとめられています。
その1 レポート概要
その2 企業での実態と運用
その3 正社員の実態と意識
その4 コロナ禍の影響について
その5 副業に関するリスクについて(本記事)
その6 企業での受け入れの状況
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[取材・編集 KROW編集部]
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