事業再構築補助金:卒業促進枠の詳細とその活用方法
事業再構築補助金と卒業促進枠の概要
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金とは、中小企業等の「思い切った事業再構築」を支援することで、ポストコロナ等経営環境の変化に対応し、日本経済の構造転換を促進することを目的とした補助金です。
出典:「事業再構築補助金の概要」令和5年8月31日中小企業庁
卒業促進枠とは
卒業促進枠とは、成長分野への挑戦を促す「成長枠」とグリーン分野での高い成長を促す「グリーン成長枠」の上乗せ枠(上限が2倍となる)として設定されたものです。そのため、申請要件である従業員数と補助上限額は「成長枠」と「グリーン成長枠」に準ずるとされています。
「成長枠」と「グリーン成長枠」への動機づけを強めることを役割とする点で「大規模賃金引上促進枠」と似ていますが、事業規模拡大を目指すことに「卒業促進枠」の特色があります。
もっとも、「成長枠」や「グリーン成長枠」と差別化するために、同一の設備や建物を、卒業促進枠と成長枠で重ねて補助対象とすることはできません。また、「大規模賃金引上促進枠」との併用も不可です。
出典:「必須申請要件」事業再構築補助金
卒業促進枠の要件と補助内容
卒業促進枠の必須申請要件
卒業促進枠の補助金を受けるには、以下の(1)(2)(3)の全て満たすことが必要です。
(1)申請要件
・成長枠又はグリーン成長枠と、同一の公募回に申請すること
「成長枠」と「グリーン成長枠」の上乗せ枠として設定されたものであるため、同時に申請することは当然といえます。
(2)卒業要件
・成長枠又はグリーン成長枠の補助事業終了後3年から5年で既存の企業枠から卒業すること
「卒業」とは、応募時点で中小企業の場合、特定事業者又は中堅企業、大企業に成長すること。
応募時点で特定事業者の場合、中堅企業又は大企業に成長すること。応募時点で中堅企業の場合、大企業に成長することを示します。
(3)実績報告
実績報告とは、様式第6による実績報告書やその証拠となる書類等を提出する行為を示します。
この報告を、補助事業実施期間の終了日又は、成長枠又はグリーン成長枠の補助事業が完了した日(又は廃止の承認を受けた日)から起算して30日を経過した日のいずれかの早い日までに提出しなければなりません。
補助内容
卒業促進枠は、「成長枠」又は「グリーン成長枠」の上乗せ枠として上限が2倍になります。
(1)補助上限額
成長枠・グリーン成長枠に準じるため、「成長枠」と同時に申請する場合、従業員規模により2000万円から7000万円となります。「グリーン成長枠のエントリー類型」と同時に申請する場合、中小企業は従業員規模により4000万円から8000万円、中堅企業は1億円。「グリーン成長枠のスタンダード類型」と同時に申請する場合、中小企業は1億円、中堅企業は1.5億円となります。
(2)補助率
卒業促進枠の補助率は、中小企業は1/2、中堅企業は1/3です。
卒業促進枠は「成長枠」又は「グリーン成長枠」の上乗せ枠として上限が2倍になるため、成長枠(又はグリーン成長枠)と同時申請する場合の補助率は、中小企業で合計2/3、中堅企業で合計1/2となります。
出典:「必須申請要件」事業再構築補助金
卒業促進枠の申請方法と注意点
卒業促進枠の申請において注意しなければならないのは、「実績報告」と「補助金支給と実状の関係」です。
卒業促進枠は、「成長枠」又は「グリーン成長枠」の上乗せ枠であるため、その他の補助金枠とは異なる特徴があります。例えば、卒業促進枠が不採用でも「成長枠」と「グリーン成長枠」は通常枠として再審査されます。実績報告後、調査により卒業目標が未達成と判定された場合、補助金を変換しなければなりません。卒業促進枠の全ての要件を満たしても、その後事業規模を縮小させるとペナルティが科せられます。
こうした調査や再審査の結果について、補助金支給者側と補助対象側で見解が分かれるリスクのあるため、申請時点で注意しなければならないのです。
「実績報告」における注意点と対策
(1)補助対象者への影響
・手続きの複雑化と時間の負担増加
実績報告や支給手続きの詳細情報の明確化により、手続きの複雑化が生じ、中小企業等にとって負担が増加する可能性があります。特に、提出書類や期限の厳守が求められることで、事務作業にかかる時間や労力が増えるでしょう。
・支給までの時間の不透明性
各回の支給手続きの詳細情報が明確化されたとしても、支給までの時間が不透明であることが中小企業等の経営に影響します。支給までの期間が長引く場合、企業の資金繰りや事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
(2)補助対象者の対策
・手続きの徹底と効率化
中小企業等は、実績報告や支給手続きに関する詳細情報を十分に理解し、手続きを徹底して行う必要があります。また、効率的な手続きのために、事務作業の自動化やシステムの導入などの効果的な対策を検討することが重要です。
・スケジュールの調整とリスクマネジメント
中小企業等は、支給までの時間の不透明性を考慮して事業計画や資金繰りを調整し、リスクを適切に管理する必要があります。適切なスケジュール管理とリスクマネジメントすることで、支給までの期間の影響を最小限に抑えられます。
・サポート機関や専門家の活用
中小企業等は、実績報告や支給手続きに関する詳細情報を把握するために、サポート機関や専門家の支援を受けることが有益です。地域の商工会議所や産業支援センターなどの機関や、税務・会計の専門家などが、適切な情報提供やアドバイスを提供してくれるでしょう。
「補助金支給と実状の関係」における注意点と対策
(1)補助対象者への影響
・中小企業の成長機会の拡大
卒業促進枠の導入により、中小企業等は通常枠の事業再構築を通じて中堅企業や大企業への成長を促進する機会を得られます。一方で、中堅企業や大企業への成長を目指す意識を高める必要があります。これには、事業戦略の再検討や組織の強化、市場の拡大など、成長に向けた具体的な対策が必要です。
・リスク管理と規模拡大の課題
卒業促進枠の特徴として、目標未達や事業規模の縮小に対するペナルティがあることが挙げられます。中小企業等はこれらのリスクを適切に管理し、事業規模を拡大するための戦略を慎重に検討する必要があります。
(2)補助対象者の対策
・成長戦略の策定と実行
中小企業等は、卒業促進枠を活用して中堅企業や大企業への成長を目指すための戦略を策定し、実行する必要があります。これには、市場調査や競合分析を通じた事業戦略の構築や、組織の強化、財務戦略の最適化などが含まれます。
・リスク管理とコンプライアンスの強化
卒業促進枠にはリスクやペナルティが存在するため、リスク管理体制を強化し、コンプライアンスを確保する必要があります。適切な内部統制の確立や法令順守の徹底が必要です。
・パートナーシップの構築と資源の活用
成長戦略の実行において外部パートナーとの連携や資源の活用が重要です。産業団体や地域のネットワークを活用し、経験豊富なパートナーとの協力関係を築くことで、成長に向けた支援を受けられます。
まとめ
事業再構築補助金の卒業促進枠は、中小企業の成長と経済の躍進を支援する重要な手段です。この枠組みは、企業が新たな市場に進出し、持続可能な事業モデルを構築するための貴重な機会を提供しています。
しかしながら、その活用には慎重な計画と的確な戦略が必要です。中小企業経営者は、補助金の利用方法を熟知し、組織を強化し、市場のニーズに適応する能力を高める必要があります。この過程で、事業の拡大と地域経済の発展に向けて、大きな成果を得られるでしょう。
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[取材・編集 KROW編集部]
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