電子帳簿保存法のバックアップ:データ消失を防ぎ、安心を手に入れる
電子帳簿保存法とは何か?
電子帳簿保存法は、経理のデジタル化を推進し、納税者の帳簿保存負担を軽減することを目的としています。この目的を達成するために、デジタル化への容易性の差により、以下の3つの制度が設けられました。
・「電子取引」保存の義務化
電子取引の保存を義務付けることで、デジタル化への移行を促します。
・「電子帳簿等」保存の任意化
電子帳簿等の保存は任意とされており、納税者は自らの判断でこれを選択できます。
・「紙書類」スキャナ保存の任意化
スキャナを用いた保存も任意とされており、納税者の好みや事情に応じて選択できます。
出典:「電子帳簿保存法関係」国税庁
データバックアップの必要性
テータバックアップの必要性は、法的な観点と管理上の観点から考える必要があります。
法的バックアップの必要性
電子帳簿保存法では、電子取引データ、電子帳簿等、紙書類スキャナデータの「バックアップ」は法令上の要件とはなっていません。
しかし、バックアップを取らずにデータを消失してしまうと、原本書類を消失した場合と同様に、法令違反となる可能性が生じます。
例えば、以下のような、税法上の3つの罰則と会社法上の罰則を科せられるリスクが生じるのです。従って、法的バックアップの必要性は高いと考えます。
・青色申告の取り消し(法人税法第127条第1項)
・10%の重加算税:通常の追徴課税と合わせ合計45%の追徴課税(国税通則法68条1項)
・仕入の消費税額が控除されない(消費税法第30条)
・保存義務違反や虚偽の記帳として100万円以下の罰金(会社法第976条)
管理上のバックアップの必要性
(1)「電子取引」及び「電子帳簿等」保存の場合
電磁的記録は、記録が大量消滅する危険性が高く、経年変化等による記録状態の劣化も考えられます。しかも、紙の資料も保存されていないため、データが消えた場合にバックアップが困難な状況が生じてしまいます。従って、以下のような事情から管理上のバックアップの必要性が高いといえるでしょう。
・データ消失のリスクを回避し、事業の継続性を確保するため
・誤操作によるデータ損失を防ぐため
・データの改ざんや漏洩を防止するため
(2)「紙書類」スキャナデータ保存の場合
紙の資料は保存されているため、電磁的記録ほど管理上のバックアップの必要性は高くありません。しかし、電子帳簿保存法が紙書類のスキャナ保存を認めたのは、ペーパーレス化の促進により、スペースの有効活用及び、書類整理のための出社や業務が不要となることが考慮されたためです。従って、紙書類のスキャナ保存に関してもバックアップしておくことが管理上望ましいといえます。しかも、スキャナ保存した場合、電磁的記録となるので、①と同じように、バックアップの必要性が生まれます。
3. データバックアップの方法
電子取引保存に関するバックアップ方法
電子取引保存に関するバックアップ方法は、「ローカル」バックアップと「クラウド」バックアップの2つが考えられます。
(1)ローカルバックアップ
ローカルバックアップとは、データを同じコンピューターまたはネットワーク内の別のストレージデバイスにコピーすることで、データの損失を防ぐ手法です。例えば、外付けハードディスクやNASなどへ定期的にコピーすることやファイルコピーソフトやバックアップソフトを使用することが考えられます。
但し、ローカルバックアップはデータがオンプレミスに保存されるため、セキュリティ面での注意が必要です。物理的な災害(火災、洪水など)によるリスクがあるため、適切な場所にバックアップを保存する必要があります。
(2)クラウドバックアップ
クラウドバックアップとは、オンラインストレージサービスやクラウドプロバイダーを利用して、データをリモートサーバーにバックアップする手法です。自動バックアップ機能による利便性にメリットがあります。
但し、クラウドバックアップはインターネット経由でデータを外部のサーバーに保存するため、セキュリティとプライバシーに関するリスクがあります。また、データ転送速度や月額料金などの制約も考慮することが必要です。
電子帳簿等保存に関するバックアップ方法
電子帳簿等保存に関するバックアップ方法は、「データベース」バックアップと「ファイル」バックアップの2つが考えられます。
データベースバックアップとは、データベース内の情報を定期的にバックアップする手法です。例えば、会計ソフトのバックアップ機能を使うことが考えられます。データベースの構造や関係性を維持したままバックアップを取得できることがメリットです。
但し、データベースバックアップは特定のデータベースシステムに特化してため、他の手法と比較した場合、対象となるデータがデータベース内にどのように保存されているかを考慮する必要があります。また、データベースのスキーマや構造の変更に柔軟に対応できるかも重要です。
(2)ファイルバックアップ
ファイルバックアップとは、ファイル単位でデータをバックアップする手法です。例えば、会計ソフトのデータファイルのバックアップや外付けハードディスクやNASなどへの保存が考えられます。ファイルごと柔軟に選択できるため、必要なデータのみをバックアップできます。
但し、ファイルバックアップは単純なファイル単位でのバックアップであり、データの整合性や一貫性を保証することが難しい点がデメリットです。特に複数のファイルやディレクトリ間で関連性がある場合、それらの整合性を維持するための手段を考慮する必要があります。
紙書類スキャナデータに関するバックアップ方法
紙書類スキャナデータに関するバックアップ方法は、「画像ファイル」バックアップと「OCR処理」によるテキストデータバックアップの2つが考えられます。
(1)画像ファイルバックアップ
画像ファイルバックアップとは、スキャンした画像ファイルを外部記憶装置へ保存する手法です。例えば、JPEG、PNG、PDFなどの形式に保存することが考えられます。
但し、画像ファイルバックアップは他の手法と比較すると、画像ファイルの種類やサイズ、変更頻度などを考慮することが必要です。また、画像ファイルのメタデータ(撮影日時、場所など)の重要性も考慮すべきです。
(2)OCR処理によるテキストデータバックアップ
OCR(Optical Character Recognition)処理によるテキストデータバックアップは、スキャンされた文書や画像内の文字を認識し、テキストデータとして保存する手法です。例えば、OCRソフトで文字を認識しテキストデータ化することが考えられます。テキストデータとして保存されるため、検索や編集が容易です。
但し、OCRの精度や処理速度、言語サポートなどを評価・分析する必要があります。また、OCRによる変換によって生じる誤りや不整合性についても注意が必要です。
4. まとめ
電子帳簿保存法のバックアップに関する重要なポイントを説明してきました。データ消失によるリスクを回避し、安心して事業を運営するためには、適切なバックアップ方法を選択し、定期的な管理を行うことが不可欠です。法的な観点からも、管理上の観点からも、データバックアップは避けて通れない重要な要素です。データの消失や改ざん、漏洩などのリスクを最小限に抑えるために、ローカルバックアップやクラウドバックアップなどの方法を検討し、適切な対策を講じることが求められます。また、紙書類のスキャナ保存に関しても、バックアップ方法を検討し、大切な書類をデータ化することで、スペースの有効活用や業務の効率化を図れます。
データバックアップは、事業の継続性を確保し、法令遵守にもつながる重要な措置です。是非、今一度ご検討いただき、安心してビジネスを展開していただければ幸いです。
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[取材・編集 KROW編集部]
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