【免税事業者の条件を解説】課税事業者となる判定基準は?
「これから事業を始めたいけど、最初は免税事業者となるのか」
「免税事業者として事業を始めたものの、いつから課税対象となるのか」
消費税の納付について、このような疑問を持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、免税事業者となる条件及び判定の基準を解説します。
これから事業を始めたい方や、すでに開業されている小規模事業の経営者、個人事業主で免税事業者の基準を確認したい方はぜひご覧ください。
免税事業者の条件・判定基準
消費税の納税について、事業者のうち免税となる条件は以下の通りです。
- 基準期間の課税売上高が1,000万円以下
- 特定期間の課税売上高が1,000万円以下
逆に以下の場合は免税になりません。
- 資本金、出資金額が1,000万円以上である場合
- 特定新規設立法人に当てはまる場合
それぞれ見ていきます。
基準期間による判断
基準期間内の課税売上高が1,000万円を超える場合、課税対象となります。
基準期間とは以下の期間を指します。
- 法人の場合は前々事業年度
- 個人事業主は前々年度
基準期間は12ヶ月に満たない場合がほとんどです。法人の場合は実際の期間を12ヶ月に換算して判断します。
6ヶ月で600万円の場合
60万円÷6ヶ月=100万円
100万円×12ヶ月=1,200万円
この場合、課税対象です。
個人事業主の場合は12カ月換算する必要はありません。
課税売上額の計算は、前期の状態によって税込か税抜きとなるかが変わります。
課税売上高の計算
- 前期が課税事業者 税抜1,000万円
- 前期が免税事業者 税込1,000万円
前期が免税事業者の場合はもともと免税で消費税の概念がないため、売り上げ金額をそのまま計算します。
特定期間による判断
特定期間とは、以下の期間です。この期間での課税売上高が1,000万円を超えた場合に、課税事業者と判断できます。
- 個人事業主:前年の1月~6月30日までの期間
- 法人:前事業年度の開始日から6ヶ月の期間
基準期間が2期前が基準であることに対し、特定期間は1期前が判断対象です。
個人事業主は例えば2月1日から開業した場合、6月30日までの5ヶ月間での判断となります。
課税売上高以外に、特定期間中に支払った給料の金額で判定することもできます。
特定期間の給料支払額が1,000万円を超えていない場合は免税です。
したがって特定期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合でも、給料支払額が1,000万円以下であれば免税となります。
また、特定期間においては短期事業年度という特例があり、短期事業年度と判断された前事業年度は特定期間になりません。
このため前々年度がある場合、その期間を特定期間となるか判断します。
前事業年度が7ヶ月以下の場合、もしくは8ヶ月未満で、かつ事業開始後6ヶ月の月末から年度終了までの期間が2ヶ月未満である場合は短期事業年度と判断されます。
出資金額による判断
資本金あるいは出資金額が1,000万円以上である場合は、免税事業者にはなりません。
基準期間や特定期間の課税売上金額にかかわらず、初年度から課税対象となります。
したがって免税事業者のメリットを受けたい場合は資本金を1,000万円未満にしておくことが必要です。
特定新規設立法人に当てはまる場合
特定新規設立法人に該当する場合は免税事業者にはなりません。以下のような場合は特定新規設立法人となります。
(1) その基準期間がない事業年度開始の日において、他の者によりその新規設立法人の株式等の50パーセント超を直接または間接に保有される場合など、他の者によりその新規設立法人が支配される一定の場合(特定要件)に該当すること。
(2) 上記(1)の特定要件に該当するかどうかの判定の基礎となった他の者およびその他の者と一定の特殊な関係にある法人のうちいずれかの者(判定対象者)のその新規設立法人の当該事業年度の基準期間に相当する期間(基準期間相当期間)における課税売上高が5億円を超えていること。
引用元:国税庁ホームページ
課税売上額が5億円を超えるような企業から50%以上の出資を受けている場合や、これらの企業と関係のある新規法人は免税事業者にはならないため、初年度から課税されます。
免税事業者・課税事業者の切り替え
免税事業者であっても、対象期間での課税売上額が1,000万円を超えるなど条件によって自動的に課税対象となります。
しかし、自動で対象になる場合でも還付金を受け取るためには、課税期間が始まる前に税務署へ消費税課税事業者届出書を提出する必要があります。
なお、設立初年度から課税対象である場合は、法人設立届出書を提出していれば消費税課税事業者届出書の提出は不要です。
また自ら免税事業者から課税事業者へ、もしくは逆へと切り替えることができます。
ただし、一度課税事業者となった場合、変更した後2年間は免税事業者へと戻ることはできません。
このため課税事業者へ変更する際は十分に検討することが大切です。
以下に切り替えの例をご紹介します。
免税事業者から課税事業者へ切り替えるケース
仕入税額控除など消費税還付を受けた方がメリットがある場合や、インボイス制度導入に対応するなどの理由により、免税事業者から課税事業者へと切り替えを希望する事業者があります。
令和5年10月1日より開始されるインボイス制度により、課税事業者でなければ適格請求書の発行ができません。
このため取引先の要望に応えられなくなる可能性があり、免税事業者から課税事業者への切り替えは今後、ひとつの分岐点であるといえます。
切り替える場合は以下を税務署への提出が必要です。
- 課税対象となり、課税事業者の申請をする場合:消費税課税事業者届出書
- 課税事業者を自ら選択する場合:消費税課税事業者選択届出書
課税事業者から免税事業者へ切り替える場合
基準期間での課税売上が1,000万円以下となった場合に免税事業者へと切り替えるケースがあります。
課税売上が1,000万円を超えた場合には自動で課税対象となるのに対し、売上が1,000万円を切った場合は手続きを行わないと免税事業者へ切り替えはできません。
免税事業者への切り替えは「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を速やかに税務署へ届ける必要があります。
まとめ
免税事業者である条件・判断基準は、基準期間あるいは特定期間の課税売上が1,000万円以下であること、また資本金、出資金額が1,000万円以上である場合や特定新規設立法人に当てはまる場合は免税事業者になりません。
令和5年10月1日からのインボイス制度の導入により免税事業者を取り巻く環境は大きく変わる可能性があります。
もちろんこれまで通り免税事業者が有利になるケースもあるため、自社の状況に合わせ十分な検討が必要です。
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[取材・編集 KROW編集部]
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