事業再構築補助金の大規模賃金引上促進枠について解説!成長枠、グリーン成長枠と組み合わせることで、更なる補助が期待できる可能性も!
近年、中小規模~中規模企業の支援を目的として、政府による事業再構築補助金制度が複数回公募されています。
最近の公募では、労働者の賃金引上げを目指す政府の方針にあわせて、大規模賃金引上促進枠による補助金の募集が行われています。
この記事では、この大規模賃金引上促進枠についてその概要を解説します。皆様の一助となれば幸いです。なお、本記事の解説内容は、基本的に令和5年8月開始の第11回公募内容に基づいています。
制度の全体像について解説
まず、補助金制度全体の概要を解説します。
目的・主旨
本制度は、コロナ禍により大きな社会構造の変化が起こり、苦境に立たされた企業を支援するために始まりました。対象となるのは資本金や従業員数が各事業分野で規定以下の規模である中小企業・中堅企業です。特定の要件を満たすことで、既定の補助金額・補助率に基づいた補助金が給付されます。
制度の開始当初はコロナ禍により減収・減益となり打開策を講じる企業をサポートする主旨が強かったため、売上の減少などが条件とされていました。
しかし、現在では売上の減少要件については撤廃され、特定の分野への構造転換を推奨する枠や、これまで以上に従業員の給与の引き上げにフォーカスした枠など、さまざまな申請枠が用意されています。
共通の要件:事業計画の確認を受ける
補助金を受け取るためには定められた要件を満たす必要があります。
全ての申請枠で必須となる要件は二つあり、一つ目は事業計画書の作成です。
この事業計画書は、経済産業省が示す事業再構築指針にあわせて3〜5年に渡る内容で作成する必要があります。そして作成した事業計画書は、税理士事務所や弁護士事務所、商工会といった認定経営革新等支援機関からチェックを受けなければなりません。
共通の要件:付加価値の向上
二つ目の全枠必須の要件は、付加価値の向上です。
補助が終了した後、3年から5年以内に付加価値額を一定以上増加させなければなりません。
付加価値額は事業により定められており、1年あたり平均で3.0%〜5.0%と定められています。
申請にあたっての8つの枠
補助金の申請に当たっては、8つの枠があります。
成長枠、グリーン成長枠、卒業促進枠、大規模賃金引上促進枠、産業構造転換枠、サプライチェーン強靭化枠、最低賃金枠、物価高騰・回復再生応援枠、などです。
これらは社会情勢の微妙な変化にあわせて公募回によっては内容が変更されたり、新たな枠が追加されたり、あるいは申請が出来なかったりする場合があります。
大規模賃金引上促進枠とは
上述の事業類型のうち、大規模賃金引上促進枠について解説します。
概要
大規模賃金引上促進枠とは、成長枠やグリーン成長枠で申請した事業者の内、大幅な賃上げを目指す事業者に対して、追加の支援を行う制度です。
要件を満たすためには、補助事業が終わってから3〜5年の間に自社の最低賃金を1年当たり45円以上引き上げるか、従業員数を1年あたりの平均で1.5%以上増員させなければいけません。
創設の背景
当初の制度では、給料を上昇させることで補助が増加するインセンティブはあったものの、ひとつの枠として大きく取り上げられることはありませんでした。
しかし、日本の労働者の賃金は90年代前半をピークに横ばいが続き、近年では大幅な物価上昇が起きています。
この状況を受けて、日本政府は労働者の賃金引上げを目指しているのです。そのため、補助金の新たな枠を創設し、従業員の給与を増加させる企業を後押ししようとしているのです。
補助金と補助率
大規模賃金引上促進枠の申請が認められた場合、成長枠・グリーン成長枠の分に上乗せで100万円から最大で3,000万円の経費が補助金の対象として認められます。
補助率はそれぞれ中小企業等が1/2、中堅企業等が1/3です。
注意点
申請にあたっては注意点もあります。あらかじめ成長枠とグリーン成長枠の申請が必要ですが、これらと同じ回の公募で申請を行わなければなりません。
過去の公募で申請を行った企業が、後日の公募で大規模賃金引上げ促進枠のみ申請を行うことは不可能です。
また、それぞれの枠で使用する経費ははっきりと分ける必要があります。成長枠もしくはグリーン成長枠で使用した経費を大規模賃金引上促進枠で補助対象とすることはできません。
なお、もしも従業員の賃金引上を達成できなかった場合、補助金は返還する必要があります。
成長枠について解説
大規模賃金引上促進枠申請の前提条件となる成長枠について解説します。
要件
成長枠は今後成長が見込まれる分野への進出に向けて内部の変革をめざす事業者を援助する枠です。
そのため、要件として取り組む事業の内容が、現在からの前後10年間で、市場規模が10%以上拡大すると政府が想定している業種・業態であることが指定されています。
給与支給額の増加も要件であり、補助が終了してから3年から5年以内に、給与支給総額を年率平均で2%以上あげなければなりません。
補助金と補助率
成長枠は従業員数により補助上限額が2,000万円〜最大7,000万円と定められています。
補助率はそれぞれ中小企業等が1/2、中堅企業等が1/3です。なお大規模な賃上げを行う場合は、中堅企業等が2/3、中小企業等が1/2まで補助率が上昇します。
グリーン成長枠について解説
続いて、同じく大規模賃金引上促進枠申請の前提条件であるグリーン成長枠について解説します。
要件
グリーン成長枠は温室効果ガスの排出ゼロを目指すカーボンニュートラルの達成に協力する事業者をサポートする枠です。
具体的には、政府が掲げるグリーン成長戦略の実行計画とされている14分野の課題解決に向けた取り組みを行う事業者が対象となります。
更に、研究開発や技術開発を2年以上行うか、全従業員の10%以上に、一年で20時間以上の人材育成を行うことが要件です。この要件はグリーン成長枠(スタンダード)とされています。
最近の公募ではより条件が緩和されたグリーン成長枠(エントリー)もあり、この場合は研究開発や技術開発を1年以上行うか、全従業員の5%以上に、一年で20時間以上の人材育成を行うことが条件とされます。
成長枠同様、給与支給額の増加も要件であり、事業終了後3年から5年以内に、給与を1年当たり平均で2%以上あげなければなりません。
補助金・補助率
補助金の上限額は、エントリーで4,000万円~1億円、スタンダードの場合は1億円~1.5億円です。どちらも企業規模によって上限額が変わります。
補助率は中小企業等が1/2、中堅企業等が1/3です。なお大規模な賃上げを行う場合は、中堅企業等が2/3、中小企業等が1/2まで補助率が上昇します。
まとめ
上記の通り、事業再構築支援補助金における大規模賃金引上促進枠について解説しました。
成長枠・グリーン成長枠とあわせて申請することで、多額の補助金による支援が期待できますが、申請の要件は細かく定められています。
実際に申請を検討する際には専門家の助言を得ながら、制度をよく調べて臨むことをおすすめします。
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[取材・編集 KROW編集部]
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