【事業再構築補助金】産業構造転換枠は最新制度でどう変わる?

補助金・助成金

【事業再構築補助金】産業構造転換枠は最新制度でどう変わる?

事業再構築補助金は、新分野進出や事業転換を目指す中小企業等を支援する制度です。

制度内では、成長促進やコロナ回復など、複数の枠が設けられています。

2021年3月に始まって以来、公募のたびに内容見直しが続けられ、第10回公募では市場縮小への対応を支援する「産業構造転換枠」が新設されました。

そして令和6年4月から始まった第12回公募では、産業構造転換枠の制度が更新され、「成長分野進出枠」という新たな枠組みに再編されています。

そこで当記事では、市場縮小への対応を必要としている事業者向けに、産業構造転換枠がどう変わったのか、補助上限額や申請要件の変更点について解説します。

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金は、中小企業等がポストコロナ時代の社会変化に対応するための支援制度です。

新分野進出や業種転換など、事業計画を事前に申請して認可されれば、投資の実施後に補助金の支給を受けられます。

補助対象者は、資本金10億円未満の中小企業と個人事業主です。

事業再構築補助金の事業類型5つ

事業再構築補助金の制度には5つの事業類型が定められており、それぞれ申請の要件や補助上限額の基準が異なります。

事業類型対象事業
成長分野進出枠(通常類型)成長分野進出や市場縮小への対策
成長分野進出枠(GX進出類型)グリーン成長戦略への取り組み
コロナ回復加速化枠(通常類型)債務借り換えや事業再生
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)最低賃金引き上げへの対応
サプライチェーン強靱化枠国内サプライチェーンの強化

上記5つの事業類型のいずれかで事業計画を策定し、認定機関からの内容確認を受ける必要があります。

産業構造転換枠とは?

過去第11回までの補助金公募では、市場縮小の課題に直面している事業者を支援する「産業構造転換枠」が設けられていました。

ところが、最新の第12回公募の要領を見ると、事業類型の中から「産業構造転換枠」が消えています。

これは、第12回から産業構造転換枠の申請要件や補助上限額に変更があり、さらに「成長分野進出枠(通常類型)」に統合されたためです。

そのため、従来の産業構造転換枠は形式上消えていますが、仕組み自体は現在も存続しています。

(引用:事業再構築補助金の概要 |事務局ホームページより

産業構造転換枠が成長分野進出枠に統合

成長分野進出枠とは?

成長分野進出枠とは、コロナ禍に始まった社会変化に対応するための事業改革を、これから行おうとしている事業者向けの支援枠です。

成長分野進出枠(通常類型)では、成長と市場縮小の2種類を対象としています。

  • 成長分野に向けた事業再構築に取り組む事業者【市場拡大要件】
  • 国内市場縮小等の課題に直面している事業者【市場縮小要件】

成長分野進出枠には、従来の「産業構造転換枠」が「市場縮小要件」として引き継がれています。

成長分野進出枠になって補助上限額・補助率はどう変わる?

従来の産業構造転換枠は、成長分野進出枠に再編された結果、補助上限額・補助率が減少しています。

【従来】産業構造転換枠【現在】成長分野進出枠(通常類型)
補助上限額
従業員20人以下
21人から50人
51人から100人
101人以上

100万円~2,000万円
100万円~4,000万円
100万円~5,000万円
100万円~7,000万円

100万円~1,500万円(2,000万円)
100万円~3,000万円(4,000万円)
100万円~4,000万円(5,000万円)
100万円~6,000万円(7,000万円)
経費の補助率中小企業者等:2/3
中堅企業等」1/2
中小企業者等:1/2(2/3)
中堅企業等:1/3(1/2)
上乗せ事項※1.廃業がある場合は
廃業費を2,000万円まで上乗せ
※1.廃業がある場合は
廃業費を2,000万円まで上乗せ

※2.()内は、
①事業場内最低賃金45円増
②給与支給総額6%増を行う場合

従来の産業構造転換枠と同じ水準の補助金を受けるためには、上乗せ事項の注記にあるとおり、最低賃金45円増と給与支給総額6%増の増加要件をクリアする必要があります。

申請要件が従来より厳しくなっていますので、注意してください。

成長分野進出枠の申請要件4つ

成長分野進出枠に申請する場合には、以下の4つの要件をクリアしなければなりません。

1.事業再構築要件

これから実施しようとしている事業再構築が、下記のいずれかに該当する必要があります。

  • 新市場進出
  • 事業転換
  • 業種転換
  • 事業再編

それぞれ満たすべき定義が示されていますので、詳細は事業再構築補助金事務局ホームページの「事業再構築指針の手引き」を確認してください。

2.金融機関要件

金融機関等または認定経営革新等支援機関に、事業計画を確認してもらう必要があります。

なお金融機関等から資金提供を受ける場合は、借入先である金融機関の事業計画確認書が必要です。

3.付加価値額要件

以下のいずれかを、対象事業終了後3年から5年で達成できる事業計画が必要になります。

  • 付加価値額の年平均成長率4.0%以上増加
  • 従業員一人あたり付加価値額の年平均成長率4.0%以上増加

なお付加価値額とは、営業利益・人件費・減価償却費を足したものと定義されています。

4.市場拡大要件または市場縮小要件

市場の拡大縮小に関する、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

【市場拡大要件】

事業終了後3年から5年で、給与支給総額を年間2%以上増加させること。加えて、取り組む事業が、市場拡大すると認められた指定の業種・業態に属していること。

【市場縮小要件】

市場規模が縮小している指定の業種・業態に属しており、別の業種・業態の新規事業を実施すること。または地域における基幹大企業撤退の影響が認められた指定地域にいて、当該大企業との取引が、売上高の10%以上を占めていること。

なお、従来の産業構造転換枠は、上記の市場縮小要件となって存続しています。

補助対象となる経費

事業再構築補助金が支給される対象の経費は限定されており、具体例として以下のものが挙げられます。

  • 対象事業のための建築、改修費
  • 機械装置
  • システム構築費
  • 技術導入費
  • 外注費
  • 専門家経費
  • 広告宣伝費
  • 教育訓練費
  • 廃業費

基本的に、対象事業との関連性が明確な経費に限定されます。関連性が低い経費は認められないので注意してください。

まとめ

当記事では事業再構築補助金の産業構造転換枠が、成長分野進出枠に変わった際の変更点について紹介しました。

産業構造転換枠は、市場規模縮小に直面している事業者を支援する制度です。最新の制度でも、成長分野進出枠へと姿を変えながら存続しています。

しかし、申請要件が細かく定められているため、制度を活用するには、入念な計画と準備が必要です。また、事業計画を策定し、認定機関の確認を取るという、手続き面の難しさもあります。

補助金制度を利用する場合は、確実に補助金を受け取れるように、補助金申請の専門家に相談することをおすすめします。

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